打刃物の伝統と技

越前打刃物の歴史

 越前打刃物は、その発祥を古く鎌倉時代にまでさかのぼるといわれており、京都の刀匠「千代鶴国安」によって、清流の地「府中(現越前市)」が刀劔を造るかたわら近郊の農民のために鎌を作ったことから始まったといわれています。また、うるしかき職人がうるしかきのため全国に出かける時、刃物を売り歩いたことから販路も全国に及びました。
武士の象徴であり、最高の道具として作られた刀作りの技術と精神は、現代の越前の職人たちにも受け継がれ、現在の越前打刃物は、日本古来の火づくり鍛造技術、手仕上を守りながら、調理用の包丁、農業·園芸用の鎌、鉈(なた)、苅込はさみ、鍬(くわ)を主製品として造り続けています。

越前打刃物独特の技法

二枚広げ(包丁)
二枚広げ(包丁)
庖丁を二枚重ねて打つことで、厚く頑丈さを必要とする峯部分と、切れ味を良くするため薄く叩き伸ばす必要のある刃元部分とを際立たせる製法です。また、熱された庖丁が二枚重なりあうことで、温度が下がりにくく、何度も熱する必要が無くなるため、鋼に負担がかからず、永く切れる丈夫な刃物を造り出すことができます。
廻し鋼付け(鎌・刈込み鋏)
廻し鋼付け(鎌・刈込み鋏)
千代鶴国安が考案したと伝えられている鋼着けの方法です。鋼を地金と鍛接した後、片隅から全体を菱型になるようにつぶすことにより、鋼を薄く伸ばすことができます。こうすることで、刃物は研ぎ易くなり、熱処理後も脆さの無い頑丈な刃を形成することが可能です。越前打刃物ならではのこの方法は、全国の産地で一般的に行われている「平置法」の製品に比べて、鍛造技術の上で相当の熟練を要し、製品ははるかに優秀です。

伝統工芸品としての打刃物

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 昭和54年1月越前打刃物は全国打刃物業界では初めて、伝統工芸品として国の指定を受けました。打刃物業としては全国の業界でも歴史が古く史料も多く保存されており、700年の長期間にわたって優れた製品を全国に供給し続けてきた実績が高く評価されました。

伝産法の対象となる伝統的工芸品には、下記の6つの要件が必要です。
【その1】 熟練した技を必要とし、芸術的要素も兼ね備えたもの
【その2】 主として日常生活用に使用されるもの
【その3】 製造過程の主要部分が手工業である
【その4】 伝統的技術または技法によって製造されている
【その5】 主たる原料が100年以上継続して使用されている
【その6】 一定の地域において10企業以上、または30人以上の従事者がその製造を行い、携わっている

後世に技を伝える伝統工芸士

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伝統工芸士とは
伝統的工芸品産業の需要拡大を狙って昭和49年に誕生した制度で、それぞれの産地固有の伝統工芸の保存、技術・技法の研鑽に努力し、その技を後世の代に伝えるという責務を負っています。 誕生時は、通商産業大臣認定資格であり、経済産業大臣認定資格を経て、現在は(財)伝統的工芸品産業振興協会が認定事業を行っており、伝産法の規定に基づく、言わば国家資格といえます。
平成22年2月25日現在、認定登録されている伝統工芸士は、4568名。
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Profile1. 伝統工芸士 重川和男
【生年月日】昭和11年1月10日生
【製造品】各種鎌・庖丁
【所 属】株式会社 澤数馬(福井県越前市余田町33-47)

【経 歴】
昭和26年 重川刃物3代目として、実父 重川徳三に打刃物製造を従事
昭和44年 父の元を離れ、㈱澤数馬商店で打刃物製造に取り組む
平成07年 伝統工芸士に認事
平成17年 福井県伝統工芸優秀継承者 表彰・玉日本印の厚鎌・中厚鎌・刈払鎌・手打庖丁の主力製造者

 花切・桑切などの小型鎌から大型の造林鎌まで、ありとあらゆる鎌の製造を手掛け、野菜収穫用庖丁や、小型の菜切、特種な形状の出刃庖丁など、他の職人が嫌がるものでも難無く製造できる。
 鍛造技術(鋼と鉄を鎚で鍛えながら形造る技法)においては、日本でもトップクラスの腕前を持ち、なだらかな鎚跡美しい刃物は、芸術品と言っても過言では無い程。
 現在は株式会社 澤数馬で、打刃物製造とともに、後継者となる若手の育成・指導に心血を注いでいる。
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